前回までのあらすじ
ある種のフェスアレルギーだった僕はブレアフェスへの参戦を決め、期待と不安の日々を過ごしていた。そしてフェス前日に仕事を終えた僕はバスに乗り無事五体満足で名古屋に着いたのであった…
本題
2月1日
BLARE FEST2020
興奮のあまり、前日に下戸にも関わらず酒を呑んだ僕は二日酔いに苦しみながらも会場入りした。
僕が着いた頃には既に全国から集まったロックファンで溢れかえっていた。
皆この日を待ち望んでいたのだ。
会場入りした僕はグッズには目もくれずクオークに駆け込み、直ぐにステージの下見をした。
ここであのバンドがライブをするのかと思うと益々興奮した。もうすぐにでも始めて欲しいという気持ちを抑えてフロアへ入っていった。
ROTTENGRAFFTY
記念すべき最初にライブを行ったのは「響都のドブネズミ」ことROTTENGRAFFTYだった。
最初にステージに上がったバンドがそのフェスの成功の鍵を握ると言われているが、そこは百戦錬磨のライブバンド。最高のスタートをきってくれた。
金色グラフティーからスタートした事でフロアは爆発した。皆この瞬間を待ち焦がれていたのだ。僕は彼等がライブをしているFirestageではなくWaterstageから観ていたけど、その熱気はここまで伝わるものだった。
そしていきなりサプライズが発生する。
coldrainのカバー、まさかのThe Reveletionだ。ここで一気に会場のボルテージが上がった。Waterstageから大人しく観ていたはずが気がつくと発生していたモッシュピットに飛び込み、叫んでいた。
「これは準備体操ちゃうぞ」
Vo.NOBUYAがそうMCで煽っていた。
そう、ここはBLARE FESTなんだ。ただのフェスではないのだ。
忘れられない2日間が幕を開けた。
Crossfaith
ロットンのライブ終了後、余韻に浸る間もないままCrossfaithのライブがスタートした。今回のフェスでは転換時間が短く、10分間隔でライブがスタートする。人を休ませる気がしないというより肌に染み付いた熱気を冷まさせないという主催側のサービス精神?だろう。
海外のフェスで活躍するCrossfaithはそこで培った力をぶつけるような演奏を魅せた。
リハでThe Perfect Nightmareを演奏したと思えば、本編ではDeus Ex Machina→ Catastrophe→ Monolithという人でなしの人でなしによる、人でなしの為の序盤から待望の新曲Endorphinを披露するなど、「これが欲しかったんだろ!ブレア!」と言わんばかりのセットリスト。
Countdown To Hellでは巨大なウォールオブデスが各所で発生した。もう皆次観に行くバンドの事とかは一切考えていなかったのだろう。そうでなければあんなに人でなしの様な事なんか出来やしないだろう。
そしてBDB以来となるmasatoとのコラボが実現し、夢のような時間はあっという間に過ぎていった。
ROTTENGRAFFTY 、Crossfaithという日本が誇るラウドロックバンドからスタートしたこのフェスは最高のオープニングで幕を開けた。
閑話休題
Crossfaithを見終えた僕は物販そしてフードコートへ向かった。
良いところを確保する為にあえて物販はスルーしていたけど、やっぱり気になったのだった。
フェスグッズは殆どが売れ切れて無かったけど、目当てのリストバンドが買えたので満足した。
さあ次は昼飯を…と思っていたが、ここで誤算が発生した。
時間は丁度1時頃、ライブ終わりのキッズ達がフードコートを占拠していたのだ。
腹は減っているのは僕だけではなかった。途方もない行列を見た僕は仕方なく空いていた入口近くの売店で焼きそばを買って食べた。ぶっちゃけフェスで食べるものじゃないのは百も承知だけど仕方がない。
さて飯を食っていると激しくバンド演奏が聴こえてきた。
フードコートに隣接しているThunderstageからだ。爆音が流れる中食べる昼飯は中々だった。ゴムみたいな食感の焼きそばでも美味しく感じるから不思議だ。
PRAISE、REDORCAが演奏していたその時間は若さ溢れるフロアで盛り上がっていた。特に印象に残っているのはREDORCAのベーシスト葛城京太郎の圧巻の演奏だ。
金髪オールバックに和服という一度見たら忘れられない風貌の彼は、まるでこの大舞台に立つ喜びを表すようなベース捌きを魅せてくれた。
REDORCAは金子ノブアキが中心となって結成されたプロジェクトだけど、この日のライブを観る限りでは京之介とVo.来門がこのプロジェクトを引っ張る存在になるだろうなと感じた。
そしてそのまま僕はこのステージに留まる事にした。海外からの刺客を観る為に
Annalynn
タイから来日したメタルコアバンドという触れ込みに僕は?となった。お国柄の為かあまり想像がつかなかったけど、名古屋へ向かうバスの中で聴いた彼等のサウンドは僕の心を掴んで離さなかった。
海外のバンドが中々来日する事がないこのご時世。観て損はしないだろうと思い観る事にした。
それは正解だった。
想像以上の轟音はその場にいたフロアの人間を魅了し、ヘドバンモッシュの嵐を産み出した。
圧巻だったのがVoがサークルピットを煽った瞬間、今までどこにいたんだ?と思うぐらいのハーコーモッシュが発生した事だ。そうここはジャンルの壁を壊す為に開催されたBLARE FEST。ハードな音楽を愛する者にとっては格好の晴れ舞台だ。
その様子はどこか刹那的な印象を受けた。「この瞬間を俺達は待ち望んでいたんだ!ここで暴れなくていつ暴れるんだ!」と言わんばかりに彼等は熱狂していた。そしてそれに応えるようにバンドも更にギアを上げていった。
更にPaleduskのKaito、そして我らが世界に誇るCrystal Lakeのryoが登場しフロアのボルテージはピークに達した。
彼等は30分という短い時間で濃厚なまでのメタルコアでその場にいた皆を狂わせてステージを降りていった。
SHANK
メタルコアで血気溢れたフロアに登場したのは、全く雰囲気の異なるメロコアバンドSHANKだ。
実は前もってフォロワーさんから勧められた事もあり楽しみにしていたバンドの1つだ。
メロコアに関してはあまり詳しくなかった事もあってどういう風に受け止めたら良いか分からなかったけど、彼らの演奏を聴いたら答えは出た。
なんて事はない。演奏に身を委ねて身体を動かせば良いんだ。
ツービートを基調とし、メロコアというよりNirvana等のグランジぽさを感じる彼等の演奏で僕は気がつくと下手くそな2ステップを踏みながら楽しんでいた。
MCもアッサリした感じで淡々と進み、まるで僕達の音楽を聴いてくれたらそれで良いというスタンスなんだろうなと感じた。
彼等に次会えるのはハジマザの大阪公演だ。それまでに2ステップを練習しようと心に決めた。
MAN WITH A MISSON
いよいよ初遭遇となるマンウィズ
ファンから愛されているバンドの1つである彼等を観れるのもこのフェスのおかげだ。僕がステージに来た時にはRaise your flag終わっていたけどもな(泣)
しかしそこは百戦錬磨の強者と言われているマンウィズ。初見の人やファンもといガウラーにも優しい定番曲を多くセトリに盛り込んでくれた。
FLY AGAINではガウガウポーズをやったり、Remember meでは思わずウルッときたり、彼等の邦ロックを牽引する実力に僕はウットリしてしまった。
さっきまで殺気だったバンドばかり聴いていたせいか、その音楽は僕の心をホッコリさせた。僕は彼等が気になってしょうがない。
特に何人かのメンバー、口元が黒い何かが存在する様に見えたのだけど、まるで黒塗りの顔をした人g
<対象となる人物Aの記憶を改竄しました>
<当面はAを監視対象とし、観察します>
<不審な言動、行動をとった場合、即座に処分します>
FEVER333
さていよいよ本日の目玉の1つ、海外からのビッグバンドFEVER333の登場だ。
グラミー賞にノミネートされた彼等のパフォーマンスを観に来たファンでWaterstageはあっという間に埋め尽くされた。洋楽離れが叫ばれる中これだけの人を集められるバンド・ミュージシャンは数少ない。
彼等が話題になったのは、あの名バンドRage Against the Machineを彷彿とさせるミクスチャーロックと気が狂ってるとしか表現出来ないライブパフォーマンスだ。
実際僕の観た光景を簡単に説明すると
・Voジェイソンが叫び散らしながらステージを走り回るのが基本的動作
・ジェイソン、機材でスケボーをする
・ジェイソン、機材を積み重ねてその上で歌う
・ジェイソン、寝転びながら叫ぶ
・ジェイソン、機材を横に並べて簡易式アスレチックを作成。その上を走り回る
・ジェイソン、機材箱に入ろうとして失敗する
・ジェイソン、登る
・Dr.アリック、上半身裸で叫ぶ
…もう訳が分からなくなってきた
そして最後に彼、ギタリストのステファンが会場に来ていた全員を驚かせる行動を起こした。
彼はジェイソンとは反対側で演奏していたが、何と彼はステージ横の鉄枠をスルスルと登り始めたのだ。彼はドンドンと上へ登り、ついにはステージ頂上にまで辿り着いたのだった。もう落ちたらただの怪我では済まない高さにも関わらず、彼はそんな事はお構いなしと言わんばかりにギターを演奏していた。
そんな彼を観て僕は思った
「本物のキチ◯イやないか、これ…」
きっとあの時バックステージでは「やべえ、アイツら頭おかしいわ…」「これ落ちて怪我したらどうします…」「怪我では済まないだろ…これ」という会話があったに違いない。裏方さんは頭を抱えていたに違いない
FEVER333は間違いなく観ていたファンの心に深い爪痕を残してその場を後にした。
いやあ彼等はマジもんのイカレでしたよ…
Crystal Lake
さあ、ついにThunderstageのトリ、Crystal Lakeの登場である。
正直、彼等がトリとはいえメインステージではなくThunderstageというのは複雑な感じになった。昨年は国内でのレコ発ツアー、そして海外でのフェス出演、世界各国でのツアー参加等、国内外問わず人々を熱狂の渦に巻き込んだライブをし続けたバンドを大きなステージで観たかった…と言えば嘘にはならない。しかもHEY-SMITHの真裏である。どれだけの人が集まるか不安だったが、その不安は一気に吹き飛んだ。
彼等の音楽に魅了されたクレイジーなファン達は僕の想像を超える程フロアを埋め尽くしていた。
そう、ここはBLARE FEST
国内外問わずラウドロックを愛する馬鹿が性別問わず集まった夢の祭典。秩序ある無法地帯を愛するクソッタレの為のフェスだ。
そして僕を含めたクソッタレの為に、Crystal Lakeは重低音を響かせにやってきたのだ。
彼等は日々を慎ましく暮らせざるを得ない人々のヒーローだ。Crystal Lakeが皆が持つ鬱憤をブチ殺す為にステージに立った。
Hail To The Fireから始まったライブは僕らのブレーキを理性のタガを外すにはもってこいだった。
普段は前方で観ている彼等を後ろから観るのは悔しかった。想像以上に人が多い事、僕自身の体力が限界に達していた事で中々前に進めなかった。
だけども後ろだから観れた光景もあった。ダイバーやリフトで持ち上げられた人は今まで観たCrystal Lakeのライブでも1、2を争う程の多さだった。
皆待っていたのだ、この瞬間を
皆我慢出来なかったんだ、その衝動に
そしてファン待望のコラボが実現した。
フェスの主催、coldrainのmasatoがステージに現れた瞬間フロアに10万ボルトが流れた様な衝撃が走った。
The Circleだ
これを待っていた。これが聴きたかった。これで暴れたかった。
ファンは「もう明日なんかどうでも良い。俺達にはこの瞬間があれば良い」と言わんばかりに暴れまわったのは後ろから観ても明らかだった。
そしてラスト、フェスのトリを飾るcoldrainを観に行く為にステージから離れる人々に対し、ryoが叫んだ。
「おい後ろ歩いてる奴!お前らだよ!お前らに言ってんだ!!」
「まだ終わってねえぞ!そこの後ろからここの前まで来てみろ最大のクラウドサーフ見せてくれ!」
そこに彼等Crystal Lakeの意地を感じた。それに応えるかの様にフロアはダイバーで溢れ返っていた。
Lost In ForeverはCrystal Lakeが最後に演奏する曲には持ってこいなエモーショナルなナンバーだ。
いつか彼等が国内フェスのメインステージで演奏し、爪痕を残す事を僕は夢見ている。あのFEVER333の様に人々の心を鷲掴みにするライブはとても素晴らしいものだから
coldrain
フェスのメインステージを締めくくるのは、最高のフェスを作り上げたcoldrainだ。
あのオープニングSEが流れた瞬間から会場内は手拍子が鳴り止まず、皆彼等の登場を待ち望んでいたのが分かった。
REVOLUTIONで幕を開けた彼等のライブは、フェスの主催者そして国内ラウドロックを巨大な物にした立役者としての実力を遺憾なく発揮していた。
そして圧巻だったのがF.T.T.Tだ。
この時masatoは観客にこう語りかけた。
「足腰が限界の奴いますか?」
「明日の事を考えていますか?」
「体力の限界に挑戦しませんか?」
「デッカいサークルピット作ろうぜ!」
会場から今日1番の歓声が上がった。そう俺達に明日なんかいらない。ここでやらなきゃ何時やるんだ。後悔するのはしてからで良い。
恐らく観客全員がそう思ったに違いない。僕のいた後方で大きなサークルピットが発生し、一人一人が全力で大きな渦を作り上げていった。こんな時に大人見なんて出来るかよ。今日しかないんだ今日しか。寝たら身体の痛みも治るんだよ。俺は馬鹿だからすぐ忘れるんだ。でもそれで良いんだ。今は純粋に楽しめば良いんだ、この最高の馬鹿騒ぎをBLARE FESTを。
気がつくと汗だくになっている僕がいた。そしてmasatoが再び語りかけてきた。
ラウドロックという音楽ジャンルが大きくなり、CDショップに専用棚が作られる様になった事。
テレビでもラウドロックが流れタイアップがつく様になった事。
そして今日このフェスが開催された事。
日本ではジャンル問わず様々なバンドやミュージシャンが同じフェスに集まる事。
海外ではジャンル毎に分かれている事。そんな中このフェスを開催出来た事。
そして
「日本のロックは劣っているとか言われているけど、海外でやってきたから言えます。」
「日本のロックが1番最先端です!」
「だから皆さん自信を持って下さい!」
1番聴きたかった言葉がmasatoの口から放たれた。
そうだ。僕らの聴いている音楽は今や世界中のファンを魅了している。
THE MAD CAPSULE MARKETS、DIR EN GREYが先導者として海外へライブをし始めてから数十年。国内のバンドが海外フェスに出演する事が当たり前になり、時にはメインステージで演奏するまでになった。
僕が学生の頃には探すのが大変だったジャンルは時を重ねる毎に大きくなり、気がつけば多くの人々を熱狂させるまでに成長した。
それがラウドロックだ。
coldrainはそのジャンルを仲間達と一緒に引っ張ってきた。聴く人が限られるジャンルがいつかカッコいいと認められる様に、彼等は血を滲む様な努力を積み重ねてきた。
そしてこのフェスの開催まで辿り着いた。2日間で4万人。昔から考えられない事が起こったのだ。
そしてライブ終盤に登場したのは、Crystal Lakeのryo、SiMのMAH、CrossfaithのKoie、HEY-SMITHの満、かなす、イイカワケンの錚々たる面々がステージを盛り上げていった。
それはまるで夢の様な光景だった。
ライブハウスで共に歩んだ仲間が大きな会場で超満員の観客が見守る中演奏している。
最高のシチュエーションだ。
最後の曲が終わり、メンバーがステージを降りた後1人残ったmasatoがこう叫んだ
「ありがとうございました!」
こっちのセリフだ。お礼が言いたいのはこっちの方だ。僕はその時とてつもなく幸せだった。
あの瞬間、僕は確信した。
BLARE FESTは伝説になると
Day2に続く
PS
長いよ(遠い目)