Denimusic Fes

邦ロックとかラウドロックとかジーンズとか

オカマバー先輩と名付けられた日

はじめに


いつだったか忘れたけど、Twitterで「嘘か本当か分からない事を呟く」みたいなタグがあってそれを使って呟いたんだけど、その時に昔、オカマバー先輩というあだ名で呼ばれた時期があった事を書いたら反響が多かったのでその事について書いてみる。




初めてのオカマバー



あれは新卒で入社した会社で冬に研修していた頃だ。
研修と言っても、人手不足の部署に人数合わせでブチ込まれて「研修」という名目で現場で作業するというものだった。
※ちなみに業種は建物管理


そもそも人手不足の原因は入ってきた新人が相次いで飛ぶぐらいのスパルタな部署で人が中々定着しない事が理由だったんだけども、案の定僕もそのスパルタ指導を受ける羽目になった。
最初は「あ、社会とはこういうものなのか」と思ってはいたが、期間が経つにつれ「あ、ここブラックだわ」と実感する様になった。

朝は早く、場合によっては始発に乗らなければならず現場から会社に戻る頃には定時を超えているにも関わらず残業代は出ないようなところだった(後に社内で揉める)
それでいて現場では罵詈雑言の嵐で、その後転職した会社の社員からは「訴えたら勝てるよ。その会社…」とまで言われる程だった。


実際、本社でも半年に一回は社員クラス(本社と現場含め)の人間が飛ぶし、3ヶ月に一度は本社と現場サイドの人間が揉めるし、1年に1回は弁護士or労基署と揉める等…うん、何でここで働いてたんだよ。俺…



話を戻すと上司のパワハラ&現場長のモラハラ&部下のパワハラ&スパルタ指導で身も心もボロボロになった僕だったわけだけど、それを見てた何人かからは「大変だなあ、君も(´・ω・`)」と慰められたりもした。


その中にリーダー格の人がいた。仮にAさんとする。Aさんは元々前職で夜の仕事をしていたらしくコミュニケーション能力抜群、仕事も出来て後輩の面倒見も良い事から周りからの信頼も厚かった。


そんなある日Aさんから


「なあ、◯◯君よ。相変わらず上司からいびられて大変だな。仕事終わりに良いところ連れてってやるよ」


良いところ…社会人になって間もなかったが、その当時心が今よりも清らかだった僕でもそれがどんなところかは察する事が出来た。



「A先輩。何すか◯◯君に良いところ見せるんすか?」



「あ、A先輩。俺も付き合いますよ!」



たまたま周りにいた人達も色めきだっていた。


そりゃそうである。
元々男性率が高い職場だったので、仕事以外の会話の殆どが「金!暴力!S◯X!」である。特に彼らのセンサーで一際強いのがS◯Xである。
※なお、金=ギャンブル、暴力=昔の武勇伝


「おう!お前らも来いよ!一緒に良い思いしようぜ!」



現場は色めきだった。心なしか皆の心の声が聞こえてくるようだった



みんなの心の声「野郎ども!久々に女とイチャイチャ出来るぞー!」



みんなの心の声「おーっ!」







えっ?僕ですか?
いやあ、大人の社会見学だと思ってましたよ。うん。え?いやらしい事とか考えてませんよ?いやだなあー。





そして…



Aさん「ちわー!ママ久しぶりー!」






オカマバーのママ「あらぁ〜いらっしゃい(はぁと)」




みんなの心の声「違ぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!!」




そう、みんな色めきだっていた。一次会で酒をたらふく呑み、店を出るまでは…



僕達が来たのは大阪の某繁華街の裏地にあるいわば隠れ家的オカマバーもといゲイバーだった。


そこで現れたのは黒のチャイナドレスに身を包んだオネエ…もといお姉様だった。なお顔つきと全体の雰囲気は若い頃のピーターだ。
何か知らんが覇気が凄い。いざとなれば2丁拳銃スタイルでガン=カタとかやりそうな雰囲気を漂わせていた。ただ者ではない。




ママ「ホント久しぶりよねえ〜。もう、どこ行ってたのよ〜( ´Д`)σ)Д`)プニョプニョ」



Aさん「いやあ、仕事が忙しくてさあ。ごめんよ会いたかったよー」




みんな「」





濃い…なんだこの濃さは、二郎系ラーメンはおろか大阪にあるラーメンの名店「無鉄砲」の背脂たっぷりの豚骨ラーメンよりも濃いよ。この世界観。


で、その店で何があったかは憶えていない。何故ならあまりの衝撃で何がどうなったかは憶えていない。強いて言うならその店には客のニーズに最大限応える為に各ジャンルのオカマがいた事だろうか。



お笑い系担当と思われるポッチャリ系オカマ、V系バンドのスッピンみたいな顔のオカマ、沖縄から遥々来阪したエキゾチック系オカマ、ママを支えるべく歴戦を重ねた感じのある貫禄のあるオカマetc、etc



何というか、TVのバラエティ番組でしか見た事のないオカマが沢山いたのだ。そりゃショックで何も憶えていないはずだ。


そこでショーを観た後、みんなで店を後にしたのだが、心なしか皆憔悴しきっていた。「こんなはずでは…」と思っていたに違いない。一方Aさんは終始(゚∀゚)←こんな顔だったのを憶えている。



「世の中には知らない事がまだあるんだなあ」と思いながら、僕はホットコーヒーを飲みながら帰路についた。



2度目のオカマバー


「◯◯君、こないだA君とオカマバー行ったんだって?」



そう話しかけてきたのは、本社で働いてる営業のBさんだった。Bさんは営業部の中でも謎が多く、周りからも何を考えてるか分からないと評されていたが現場からの評判は良い様だった。



僕「はい、こないだ行きましたけど」



Bさん「そうなんだ。いやあ、それだったら仕事終わったら一緒に僕の行きつけのオカマバーに案内するよ」



僕「」


何故だ…どうやら僕はAさんからはオカマバーを楽しんでたと判断されたらしい。会社での序列は最下位の僕に拒否権はなく、仕事終わりに僕は再びオカマバーに行く事となった。


行った場所は呑み屋もそこそこにある住宅街で昔ながらの店がちょこちょことある古びた感じのところだった。

雑居ビルの狭い店に入った僕の前に現れたのは





タイ人のオカマ「イラッシャイマセ!ママァー!シャチョサンキタヨー!」




まさかの海外勢である…





そこの店はバーママとそのタイ人のオカマで営んでいるこじんまりとした店だった。だがその分コミュニケーションが濃い店だったと思う…何であまり憶えていないかと言うとその後のエピソードが濃すぎて憶えていないのだ。確かママがテンションが上がるあまり脱いだのは憶えている。後は他のお客さんがやたらとジローラモを彷彿とさせる発音で「オカーマァァァァ!!」と巻き舌気味で叫んでた事ぐらいだ。


で、その後また来店する機会があってAさんもついてくる事になった。が、その時はママ1人で店を切り盛りしてる状態だった。



Bさん「あれ?こないだのタイ人の子は?」



ママ「あの子?えーとね、不法滞在がバレて強制送還されちゃった♪」



…こんなに明るい口調でグレーゾーンをブチ破る発言を聞いたのは初めてだった。





3度目のオカマバー


Aさん「◯◯君よ。君には是非観てもらいたいショーがあるんだ。無論オカマバーだ。



僕「ア、ハイ」




拒否権はなかった。Bさんと一緒にオカマバーへ行って暫く経った後だ。どうもAさんの心に火をつけたらしく、あの後現場の人達をやたらとオカマバーに誘っているのを知った。


まあ、これには理由があって、当時所属していた部署の上層部と仲がよろしくなかったAさんに異動話が出てきた。異動先は会社でも1、2を争う規模の作業員を擁する現場だったけど、業務内容と職場環境は社内ではぶっちぎりの過酷さと言っても過言ではないところだった。


いやあ、あそこはしんどかった。一時期机の中に退職届を入れてたからね。24時間勤務もしたし、夜勤もしたし、残業時間は余裕で法定時間越えたし、週8勤務もしたし、現場のトップに至っては「血尿出ちゃった(´;ω;`)」て言うぐらい過酷な現場だったよ。



うん…だから何で辞めなかったんだよ、マジで(現場のマネジメント及び業務内容変更による人手不足の為に約1年常駐してたワイ)



そんなこんなでストレスが積もりに積もっていたのだろう。拒否権はなかった。大事な事だから2度言う。


そんなこんなで僕を含めた仲の良い現場の人達が連れてかれた店はいかにも老舗!信頼と実績!これが王道!と言わんばかりの高級感溢れるお店だった。奢りとはいえAさんの財布が心配になる…


その店にはボーイさんが数名おり、今まで行ったオカマバーよりもキャパもさることながら広さも尋常じゃないほどの広さだった。
ライブハウスで例えるなら今まで行った店がPangea、SUNHALLクラスだとすれば今回来た店はBigcatないしなんばHacthクラスといった感じのところだ。



と言う事はだ。







大量のオカマ軍団「いらっしゃ〜い(はぁと)」





濃 い よ



ダメだ勝てん。何が勝つとか誰が負けるとかではないが勝てん。何だろう…クレヨンしんちゃんの映画でやたらとオカマが出てきて、しかも結構良い役を貰っている理由が分かった気がする。全員強そうだ。何か暗器使いそう。履いてるヒールから刃が出てきそうな感じだ。


僕とAさんを含めた4人はボーイの案内でテーブルに案内された。そこでオカマも現れたのだが…




めっちゃ美人だった。





何?今まで会ってきたオカマは何だったんだ。というぐらいにレベルが高い。ほぼ女性…というより女性より綺麗だ。リアルで「こんなに可愛い子が女の子なわけがない!」という出来事に出会ったのはこの時だけだ。


しかも密着具合が凄い。ほぼ0だ。逃げ場がない。声色以外は女性。肌の質感も並の女性では勝てないレベルでスベスベだ。あと、何か知らんがエロい。何者だアンタら。


そして、この店の長。高そうな和服に身を包んだバーのママが現れたのである。




ママ「あらぁAちゃん、久々やないの〜(はぁと)生きとったんかワレェ




ドスの効いた声を発して現れたのは戦場で百戦錬磨の相手と戦ってきた様な風格のある雰囲気を持つカルーセル麻紀の様な人だった。


何だろう…いざとなれば店の奥からバズーカ砲持ってシュワちゃんよろしく相手を塵にする事に全く罪悪感を感じる事なくぶっ放す事が出来る様な威圧感がある。絶対に敵に回してはならない生物がいるとこの時思った。





ママ「ホンマになあ、アンタ大丈夫かいな。金持っとるんけ?まあ楽しんで行きやあ。あ、お連れさんもどうぞ楽しんでいってやあ。」




強 い(確信)





思わず「Yes sir!!」と叫びたくなる様な雰囲気を出しながらママはその場を後にした。



そんなこんなでステージではショーが始まったのだが…









レベルが高え…




これ1回するのに幾ら掛かってるんだ?と思うぐらいにド派手なパフォーマンスがライトアップされたステージ上で繰り広げられていた。歌ありダンスありストリップあり…うん?ストリップ?


そう、この店にはストリップがあったのだ。オカマの。もちろん初めて見たけどAさん以外の僕らは( ゚Д゚)←の顔で見ていた。
見た目も女性と変わらんオカマが脱いどるのだ。しかもちゃんとおっぱいがある。そして何より竿がない。そうお◯ん◯んがないのだ。


周りからも「え!?な、ない!お◯ん◯んがない!Σ(゚д゚lll)」と反応が多かった。
何というか衝撃的すぎて思わず「性別って何だ?」と疑問が出てくる程だった。


もっともショーのラストでママが「えー、殿方の皆さん。皆様が凝視してたのはチ◯コです。チ◯コ。あの子達は女の子ではありません。オカマです。あと、皆さんがおっぱいと思って見ていたのは、あれシリコンです。」と言ってあっという間にみんなを現実に戻したわけだけども。


これも後で知った話だけどストリップに出演したオカマは世界中にいるオカマで1番綺麗なオカマを決める大会に出場する程の美貌の持ち主だったらしい。そりゃそういうオカマが在籍する店である。レベルは高いに決まっている。


店を出た後、皆口を揃えて「レベル高え」「オカマ凄え…」と感想を漏らしていた。






するとAさんが満面の笑みで
「な!良かっただろう!これで思い残す事はないよ!」




と言っていたのを憶えている。





まとめ



とまあこんな感じである。
ちなみにオカマバー先輩というあだ名をつけたのは高校時代の同級生である。久々に友人同士で遊んでた時に会話の中で上記の体験を話していたらそのあだ名が付いたのである。


余談ではあるがその友人、聖地巡礼する程の熱烈なB'zの稲葉さんファンで「俺はな!稲葉さんで◯◯する事が出来るんだ!」と豪語していた。あ、◯◯の部分はご想像にお任せします。


まあ、共通するのはパワーが常人よりも遥かに上という事だ。ここでいうパワーとは生命力とかそういうのを指す。

元々オカマもといゲイと呼ばれる人々は、その立場上世間から冷たい目で見られる事もあったんだろうなと思う。(Twitter上にいる有名オネエのエピソードを聞いてる範囲だと)


だからこそなのか、それとも本人達の資質からなのかは分からないけど心が強い。何というかモノが違うのだ。そんじょそこらの人間では敵わないぐらいの胆力であらゆる困難を乗り越えてきてるのだろう。覚悟が違うのである。


実際店で話していると「親には内緒。もし絶縁されてもそれもまた定めよ」と話す子もいたし、「もうね。余生は楽しく過ごすと決めてるの」と笑って話す妙齢のオネエ様もいた。



腹を括ってるのが伝わるし、その括る理由も痛い程分かる。だからこそ彼女達は強いんだろうなあと思う。


今日、とうとう緊急事態宣言が発動されたけども、何だかんだで僕が行った店のオカマ達はそんな事を屁とも思わず生きている様な気がするのだ。

きっと宣言が解除されたら、またパワフルなパフォーマンスで人々を魅了するだろうなあと思う。






おわり














PS
なお、当時いた会社の影響で一般的に夜の店と呼ばれる店には大体行ったせいか、友人から「お◯んぽ」という名前でLINE登録されていました。泣くぞ。