Denimusic Fes

邦ロックとかラウドロックとかジーンズとか

DIRENGREYが示した「生きる」という事

はじめに


ライブハウスから人が居なくなったから早1ヶ月経とうとしてる。

全てのライブハウスやバンド、アイドル、アーティストが自粛していた訳ではないが、世間の流れにはもう逆らえないのだろう。
インターネットも世間も鬱屈とした雰囲気で息苦しくなる。


そんな中、様々なバンドやアーティスト達が知恵を出してライブDVDの期間限定配信やインスタライブなどでファンを喜ばせている。
ありがたいと思う反面、申し訳ないな…と思ったりもする。彼らの行為に敬意を示すと共にライブが再開されたら思いっきり楽しもうと思う。


そんな中、先日「これは見て良かった」と同時に「絶対に見てほしい」と思うライブがあった。


DIRENGREY無観客ライブ


The World You Live In
KT Zepp Yokohama



DIRENGREYについて


どんなバンドか?と言われると途方もなく長い文章になるので僕の印象で説明すると、




V系をベースにパンク・ハードコア、ヘビィメタル、ラウドロック民族音楽、カオスティックハードコア、スクリーモメタルコアプログレ等を取り込んだ上に"人間の痛みとエゴ"をテーマに唯一無二の世界観をブチこんだロックバンド」



という感じになる。ぶっちゃけ公式も「カテゴライズ不能またはカテゴライズ不要なバンド」と説明してるので音楽的な説明は無理ゲーである。



彼らの凄いところは他を圧倒する世界観とそれを表現するライブパフォーマンスにある。



人間が持つ痛みとエゴという、あまり触れたくない部分に躊躇いもなく入り込み、人々の心に深い傷を残す様な楽曲。特にVo.のパフォーマンスは海外から「Satan」「Devil」など語彙力の限界を超える評価をされている。


※グロ注意

地を這うようなグロウルを魅せたかと思えば、耳を塞ぎたくなるようなホイッスルボイスとピッグスクイールhydeよりも音域が高い高音ボイスに時には官能的に、そして狂気な歌い方とパフォーマンス…



彼の魅力を語ると本当に長くなるのでこの弁にしておく。


演奏隊も彼のボーカルに負けず劣らず凄まじい風格を持つ者ばかりだ。
楽曲の大半を作曲するギターのとカッティングが冴えるDie存在も演奏もド変態(褒めてます)のベースToshiya、年々ドラムの要塞化が進むドラマーのShinya等、このメンバーだからこそDIRENGREYはDIRENGREYの音楽を作る事が出来ると言える。


一時期DIRENGREYに影響されたであろうバンドが大量に出現し(そして大量に解散)、邦ロック界でもその音楽に魅了されているバンドマンは数知れない。あのマキシマムザホルモンの亮君もファンになるほどだ。


彼らの真似しようにも真似出来ない世界観は多くの人々を虜にした。



そして、彼らは無観客ライブを敢行した。



ライブについて


このライブでは2年前に発売されたアルバム「The Insulated World」より多くの楽曲が演奏された。

The Insulated World(通常盤)

The Insulated World(通常盤)

  • アーティスト:DIR EN GREY
  • 発売日: 2018/09/26
  • メディア: CD


※グロ注意

最初に演奏された「人間を被る」から徐々にDIRENGREYが持つ狂気が顔を出していき、4曲目の「朔 -saku-」でピークを迎えたと思えば、7分強の楽曲「絶縁体」が演奏され、まるで実際にライブハウスで観ている気持ちにさせられた。

特に印象深かったのは、「谿壑の欲」からの「Ranunculus」そして「The World of Mercy」の流れる様に演奏された3曲だ。


まず「谿壑の欲」

この曲はめちゃくちゃ暗い。多分1番暗い曲教えてと言われたらこの曲になるレベルで暗い。イントロの時点で既に暗さと不穏さがMAXなのだ。横溝正史作品かと思うぐらいのヤバさだったりする。

歌詞も「喪服」だの「真っ赤な血溜まりの中」という普段聞かないワードが書かれている。


曲展開も静かな部分は静かに、激しい部分は狂気剥き出しのグロウルが冴え渡る怪作となっている。

ライブでは時より京が暗黒舞踏じみた踊りをしたと思えば、力無く倒れ込んだと思えば何やらモゾモゾと動きだしたり、かと思えば完全に狂人の様な笑みを浮かべたり…そして獣の様に叫ぶ…

伝わるかどうかは分からないが、去年の紅白で欅坂46の平手ちゃんが見せたパフォーマンスを50倍濃くした感じである。もう怖い…けど見たい!と思わせるパフォーマンスだった。


次に「Ranunculus」

これはDIRENGREYの中でも珍しい前向きなメッセージを込めたバラードである。この楽曲では「生」について肯定的な歌詞が含まれていて、最後の歌詞にも「叫び生きろ 私は生きている」という言葉が刻まれている。

ここでは打って変わって京がエモーショナルなボーカルを見せつけてくれた。アルバムではクリーンボイスで歌われているけども、ライブではサビで叫びながら歌う部分も有り、この楽曲が持つ力強さを更に引き立てている。

特に2番サビ前の叫びには圧倒させられた。この曲に関しては万人に薦められる名曲だと思う。PVの世界観でひかれるけどな。
(でも良い曲なんですよ。これ)


そして「The World of Mercy」


※しつこいようだけどグロ注意
 すまんの(´・ω・`)


DIRENGREYの曲の中でも10分という長尺の楽曲。
※貼られてるのはプロモーションVer
フルで聴きたくなったらCDを買おう!

The world of mercy (通常盤) (特典なし)

The world of mercy (通常盤) (特典なし)

  • アーティスト:DIR EN GREY
  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: CD


こちらも歌詞については「生」をテーマにしている。

「Ranunculus」と異なるのは「Ranunculus」が「他人と違う生き方を肯定し、それを願う」楽曲なのに対し「The World of Mercy」は「他人と同じ様に生きる事に絶望し、それを乗り越える事を望む」というメッセージが込められているところだ。

実際PVではいじめをテーマに描かれており、歌詞も人間が持つ身勝手で醜い部分をこれでもかというぐらいに描かれている。


※こんな楽曲だが、「慈悲の世界」という意味です。と言いつつサビでは「慈悲の世界なんぞ偽善じゃ!」と歌われています。


この曲では、「例え、自分の意思に反していても他人と同じ様に生きなければその世界からは排除され叩き潰される」という事実と「それでも自由の為に血を流してでも生きていけ」という強いメッセージが描かれている。


ライブでは、その世界観がパソコンやスマホで見ている「こちら側」に伝わる程のDIRENGREYの鬼気迫る演奏が炸裂していた。


京がマイクケーブルを自分の臓器と見立てて抉り出した後それを踏み付ける動作をした時は「とうとう壊れたか!?」と思ったし、その後に叫びながら歌ったと思えば狂った笑顔で歌う様は本当に演技でやっているのかどうかも分からない程だった。


そして曲が終わり、全ての力を出し切り倒れた京の後ろにあるバックスクリーンにはライブのタイトル「The World You Live In」"お前らの生きている世界"の文字が映し出されていた。

最後に


どエラいものを見た…という感想を出すのがやっとなぐらい圧倒された。


この3曲以降も2曲演奏されたけども恐らくボーナストラック扱いだったと思う。実際このライブのフィナーレは「The World of Mercy」だったと思う。


DIRENGREYのライブを生で観たのは2年前の夏ツアーが最初で最後で、その時は周りの客のノリが合わなくて何となく盛り上がりたくても盛り上がれない自分が居たのだけども、その時の体験を壊す勢いで印象に残る最高のライブだった。


無観客ライブといえば、この間に打首獄門同好会がハートフルかつ感動的なライブを行ったけど、それとは真逆の世界観にも関わらずこのライブも感動的なものだった。


DIRENGREYを追いかけてから10年以上経つけど、このバンドはとても前向きなメッセージを歌うでもなく、寧ろネガティブな印象が強い楽曲を歌うと思われがちだが、その背景には「痛みや苦しみを耐え、生きる人間への賛美」があるような気もする。


それを上記に挙げた3曲で示された気持ちだ。本人達にその気持ちがあるのかは分からないけど、今の世界とDIRENGREYが歌うテーマがガッチリハマったからこそ、ここまでのライブになったと思う。


これが俺達が伝えたい事だと言わんばかりにMCをせず、ライブパフォーマンスのみでここまで心を動かされるライブを観る事が出来たのは素晴らしいものだと感じた。


もしこれを読んで興味が湧いたら、是非アーカイブに残っているので見て欲しい(3/30現在)


ぶっちゃけ一般受けするバンドではないし、寧ろ割とドン引きされるバンド私的ランキング上位に食い込んでいるけどもハマったら最後、あなたも虜である。


おわり



PS.弦楽器隊はイケメン揃いですよ。お姉様方(おい)
※全員イケメンです。